【大村湾ワンダーオーシャン調査隊2023】を開催しました!その①

2023-8-18
海と日本PROJECT in ながさき

海と日本プロジェクトinながさきは、世界的にも珍しい二重の閉鎖性海域である大村湾を舞台に、水中ロボットを用いた海中調査やシュノーケリング体験を通して、大村湾の特徴や長崎の海の魅力に触れ、身近だけどあまり知られていない大村湾の不思議を学ぶことを目的とした2泊3日のプログラム「大村湾ワンダーオーシャン調査隊2023」を開催いたしました。閉鎖性海域とは一体どんな海なのか!?大村湾の生物や水質、地形などの環境、さらに課題への取り組みを調査することで閉鎖性海域の過去・現在を学び、未来を考えました!世にも不思議な閉ざされた海・大村湾の調査結果をぜひご覧ください!

このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環で実施しました。

集合

・日程:7月30日(日)~8月1日(火)

・開催場所:大村湾漁業協同組合(西彼杵郡時津町浦郷)ほか

・参加人数:小学5年生10人、小学6年生10人 計20人

7月30日(日) 1日目

<閉鎖性海域の大村湾とは?>

みなさんは大村湾を知っていますか?長崎の空の玄関口・長崎空港も大村湾の中にあるので、実は行ったことがある!という方も多いのかも知れません。大村湾は長崎県本土の真ん中に位置する大きな湾で、流域には長崎県21市町のうち5市5町がある長崎の里海です。大きさは南北25㎞、東西12㎞、面積は約320k㎡、滋賀県の琵琶湖の半分くらいの大きさです。閉鎖性海域とは、湾の大きさに比べて湾口(外洋への出入り口)が狭く、海水の入れ替わりが少ない海のこと。大村湾には出入口が2つありますが、その幅は約170mと10mだけ!しかも大村湾は同じく閉鎖性海域である佐世保湾としか繋がっていないため世界的にも珍しい二重の閉鎖性海域になっているのです。

そんな大村湾の不思議にせまる「大村湾ワンダーオーシャン調査隊2023」のスタートです!

まずは大村湾で獲れた魚が水揚げされる大村湾漁業協同組合直売所で、組合長の松田孝成さんにお話を聞きます。大村湾は外海との出入口がとても狭く、さらにその出入口は二重となっているため、外海との海水の出入りが極めて少ない湾です。松田さんは「大村湾は波が穏やかで運動量が少ない魚が多い、そのため魚には脂が良く乗っていてとても美味しい。一方で外海と比べて雨や川からの流れ込みがあるため塩分濃度が低く魚の痛みが早いという特徴もある。」と話します。普段口にする魚が美味しい理由は特殊な湾に秘密があると知った子ども達は、ノートに一生懸命メモを取りながら松田さんの話を聞いていました。

また、ここでは当日水揚げされた魚介類を実際に生け簀で見せてもらいました。夏場は特に漁獲量が少なくなるとのことでしたが、多様な種類の魚介類に子ども達はとても興奮していました。長崎県で漁獲できる魚種は約300種以上と言われ日本屈指ですが、大村湾でも約230種類と、とても多くの魚種が水揚げされます。これは全国でもトップクラスの魚種数です。波穏やかな大村湾は魚の産卵場所にもなっているのです。大村湾の特産品といえば「ナマコ」が有名です、ナマコも波がないため柔らかく極上の味わいになるそうです。

この日は大村湾の特徴を示すサザエが水揚げされていました。サザエの貝殻は一般的にツノが生えていますが、大村湾で獲れるサザエにはツノがありません。波が穏やかな大村湾では外海のように海流に流される心配が無いため、ツノが生えないそうです。子ども達は、魚種の多さ、大村湾の特徴を肌で感じていました。

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この日、漁協で調査した魚介類は、イシガニ、ガザミ、タコ、アジ、ハタ、ヒラメなど!

カニをつかんだり、タコを触ったり大興奮!

<水中ロボット制作、海中調査体験>

続いては水中ロボットの製作体験です!教えてくれるのは長崎総合科学大学の松岡和彦教授。陸上とは全く違い、その9割近くが未解明とされる海中の世界を調べるために、水中ロボットの技術向上は世界的にも重要とされています。長崎総合科学大学の学生さんがサポートに入り、配管資材の塩ビパイプを骨組みとした水中ロボットを製作します。ロボットの形は自由、子ども達は班ごとに話し合い、思い思いのロボットを組み立てていきます。プロペラや浮き、カメラの位置をきちんと考えないとロボットが沈まなかったり、海中が撮影できなかったりしてしまいます。子ども達は試行錯誤して、失敗しながらもそれぞれ世界にひとつだけの水中ロボットを組み立てました。

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水中ロボットを製作して、お昼休憩を取った後、早速ロボットを使った海中調査に向かいます。海中調査は岸壁で行うため、ライフジャケットを着用します。ライフジャケットを着るのはこの日が初めてという子も多くいましたが、海やその付近で活動をするときにはライフジャケットがとても重要です!ライフジャケットを着用することで、海での事故率はぐっと下がります。きちんとしたライフジャケットの着用方法を学び、いざ岸壁へ!班ごとに製作した水中ロボットを海に浮かべます。実際に操作をしてみるとなかなか海に沈まない、思うように動かせないといったことがありましたが、現場で浮きの重さを調整するなどして改修し、みんな無事に海中を見ることができました。海中は透明度が高くありませんでしたが、小魚や岸壁に付く貝などそれぞれが作ったロボットで見る海の中の様子に、みんな興味津々でした。また、この場所では大村湾内の水質の調査をするために、岸壁で海水を採取して次の目的地に向かいます。

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<大村湾の特産品「真珠」にスポットを当て、過去と現在の海を学ぶ>

続いては、大村湾の西側に位置する西海市の亀岳真珠さんで、長崎がNo.1を誇る大村湾の特産品「真珠」のワンダーにせまります。あまり知られていないかもしれませんが、長崎県は真珠の生産量が日本一です。2020年まで12年連続で生産量1位だった愛媛県に代わり、2021年から長崎県が2年連続で1位となっています。

参考:「e-start海面漁業生産統計調査」より※2021年度は確定値、2022年度は速報値。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001015175&tclass2=000001201760

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&tclass1=000001032185&tclass2=000001204600&stat_infid=000040053401&tclass3val=0

 

流通する真珠のほとんどは、アコヤ貝という貝で作られます。アコヤ貝から実際に玉を取り出す様子を見せてもらい、生の真珠を手に取った子ども達の目は、どんな真珠よりも輝いて見えました!ここ亀岳真珠の作業場では、養殖のアコヤ貝に、核(ドブ貝の貝殻を丸く削ったもの)とアコヤ貝の内側にある膜状の組織の外套膜(がいとうまく)を手作業で入れ込みます。ひとつひとつ丁寧に、貝に負担を与えないように行う作業はオペ(手術)と言われており、職員さんの手つきは職人そのものでした。息をするのも忘れてしまいそうな作業に、子ども達も食い入るようにその様子を眺めていました。真珠はアコヤ貝を稚貝から2~3年育て、夏場に核入れます。その後、貝を1~3年管理をして冬場にようやく玉出しとなる大変な仕事であることも学びました。「大村湾は波が穏やかで、さらに1年を通して海水温の差が大きい(水深が平均15mと浅く、内海で外気の影響を受けやすいため)。冬場にグッと海水温が下がることが、美しい真珠ができやすい条件。メリットがある一方、大村湾で赤潮が発生すると貝がすべて死んでしまうというリスクもある」と亀岳真珠の三瀬さんは話します。

真珠の生産量は全国的に衰退の傾向にあります。経営母体が25年間で約7割減少しているという担い手不足もありますが、それよりも三瀬さんは海洋環境の悪化に危機感を感じています。”富栄養化”が引き起こす赤潮の発生頻度の上昇、水質の悪化、海水温の上昇などを例にあげます。原因は様々ですが、真珠を作り出すアコヤ貝の大量死なども全国各地で発生しています。大村湾の魅力を語るとともに、環境の悪化に警鐘を鳴らす三瀬さんの講義に、子ども達も真剣に耳を傾けていました。

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<湾の出入口はどうなっているの?瀬戸をめぐるクルーズ>

前述した通り、大村湾は二重の閉鎖性海域となっていて、二つしかない出入口もとても狭い、”超”閉鎖性海域となっています。ここでは、船に乗ってその二つの出入口になっている針尾瀬戸と早岐瀬戸を見にいきます。講師を務めてくださるのは西海市教育委員会の原口さん、西海市ツアーガイドの山下さん。船上で実際に湾内を見ながら講義をしてもらいます。大村湾は閉鎖性のため干満の差が90㎝ほどしかありません。湾の出入口は潮の満ち引きの関係で、波の向きが一日の内に変化します。さらに出入口付近は極めて入り組んだリアス式海岸となっていて、特殊な潮流を生み出し、渦潮が発生することもしばしばあります。この日も波がぶつかる部分、凪になっている部分が数メートル間隔で並んでいるような不思議な海面を見ることができました。子ども達は170メートル程しかない出入口の狭さに驚き、大村湾が閉鎖的であることを実感していました。

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<湾の出入口を間近で見て、水質を調査しよう!>

湾の出入口を生で体感した子ども達は、次に湾の出入口・早岐瀬戸の海中調査に向かいます。ここでは、水中ロボットを使った海中の観察と、海水の採取を行います。長崎総合科学大学の松岡教授は、「外海との海水の入れ替えが一番多い場所。湾内の他の場所に比べ透明度が高く、水質は良いのではと予想できる」と話します。子ども達もこれまでに見た海に比べて透明に見えると感想を話していました。

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2日目は実際に海に入って、温度や生き物を調査します!

 

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