陸上の施設で魚を養殖する「陸上養殖システム」が注目される中、長崎市に作られた養殖施設への行政視察が相次いでいます。
長崎市北部の山あいにある陸上養殖施設。かつては養鶏場として使われたものを転用して、水槽を設置しています。この陸上養殖システムは、「どこでも、誰でもできる」とうたっていて、ここではクエ、タイ、シマアジ、フグなど高級魚ばかりを育てています。
この日、視察に訪れたのは西彼・長与町の職員一行。施設の関係者は「海を汚さない、海面養殖に比べて抗生剤を使わない。暴風雨に強いメリットを、きょう見てください」と施設を案内しました。長与町は、時津町とゴミを共同処理していて、時津町にはリサイクル施設、長与町には熱回収施設がそれぞれ建設されています。このゴミの焼却に伴う熱を、どう有効的に活用するか、長与町の模索が続いています。
このシステムでは、微生物がすみやすい、ろ過材として海底の砂を使っていて、水槽の上と下から酸素を送って水中の酸素容量を増やすことで微生物を活性化させ、実際の海の浄化作用を再現しています。鶴崎貞治さんが、20年をかけて試行錯誤の結果、水を足すことはあっても水の入れ替えなく続けられる「鶴崎方式水槽」を作り上げ、特許も取得しています。
このシステムには、長崎県の平田副知事と水産部の職員も視察に訪れました。 鶴崎さんは、副知事に養殖している魚の説明などをした後、「何度か、県の方はお見えになるんですが副知事は初めて。よかったです」と行政から関心を寄せられたことを喜んでいました。 この施設では、養殖魚を売るだけでなく、陸上養殖システム自体の販売も視野に入れていますが、まだ漁業者からの具体的な引き合いはありません。それでも鶴崎 さんは、この事業に行政の助成制度などは求めず、「PRはしてほしいなと思います。全国的にですね。それだけで十分だと思う」と話しています。システムの販売に対し、鶴崎 さん自身は控え目な態度ですが、関係者は漁業を取り巻く世界の状況を見据えると、大企業とタイアップして海外に販路を見出すことも夢ではないと期待を寄せています。
また、養殖魚についても、「ふるさと納税」の返礼品として活用できないか、前向きに検討に入ることになったということです。
(KTNテレビ長崎のニュースを一部転載)