レポート
2024.02.27

過去から未来へ!タイムトラベルで水産資源を守ろう【水産王国 松浦・玄界灘調査隊2023】を開催しました!

海と日本プロジェクトinながさきは、全国有数の水産都市、長崎県松浦市を舞台に、島民約200人の青島で行われている昔ながらの海を守る取り組みや、EU-HACCPの認定を受けた全国的にも珍しい最新鋭の魚市場について学び、過去から未来へと変わりゆく海を調査するイベント「水産王国 松浦・玄界灘調査隊2023」を開催いたしました。
(本イベントは2023年11月18、19日に実施予定でしたが、悪天候により延期されたものです)

このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環で行われています。

 

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・開催概要:過去から未来へ!タイムトラベルで水産資源を守ろう「水産王国 松浦・玄界灘調査隊2023」
・日程:2024年2月17日(土)~2月18日(日)
・開催場所:松浦魚市場(松浦市調川町下免)、青島ほか
・参加人数:小学5年生10人、小学6年生8人 計18人
・協力団体:松浦市、日本遠洋旋網漁業協同組合、まつうら党交流公社、青島体験振興会、松浦海のふるさと館

<いざ松浦市・青島へ!>

今回の調査の舞台は長崎県松浦市!みなさんは松浦市をご存知ですか?離島の数が日本一(※1)で、海に囲まれた水産県として有名な長崎県ですが、松浦市はその中でも特に漁獲量が多く、全国有数の水産都市に数えられます。特にマアジの水揚げ、養殖トラフグ・養殖マグロの生産量は全国トップクラス!近年は”アジフライの聖地”として町おこしにも成功し、全国各地にファンがいます。松浦市中心部からフェリーで20分、伊万里湾と玄界灘の境に浮かぶ小さな島・青島は、漁業が基幹産業。島に根付いた持続可能な漁業を実践し、海の環境を維持しようと藻場を復活させる活動も行っています。今回の調査隊メンバーは全員が初青島上陸!まだ見ぬ”青い”海にはどんな発見があるのでしょうか?松浦市を舞台に、調査隊活動開始です!

※1 参照https://uub.jp/pdr/g/island.html

 

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<松浦市の水産業の実態は?>

フェリー移動の興奮冷めやらぬなか青島についた調査隊メンバー。まずは青島住民センターで松浦市水産課の松本行央さんに水産都市松浦について、お話ししていただきました。長崎県北部に位置する人口約2万人の松浦市は、玄界灘に面しています。玄界灘は、朝鮮半島から降りてくる”リマン海流”と”対馬海流”が合流するところで、栄養を豊富に含んだ植物プランクトンが発生し、とても豊かな漁場になっています。そのため、松浦市の漁獲量は全国でもトップクラスです!アジの水揚げ量に至っては日本一を何度も取っています!(※2)松浦市ではアジの水揚げ量が多いことを活用し、「アジフライの聖地」として町おこしにも成功しています。アジフライを取り扱っている店舗を地図でまとめた”アジフライマップ”や、アジフライのTシャツ、キーホルダーなどのグッズをたくさん製作するなど、松浦市の名前は一躍全国に知られることになりました。今も昔も水産業に支えられている松浦市ですが、漁獲量や漁業者の数は年々減っていると松本さんは話します。さらに、漁業者の高齢化も進んでいて、これから益々漁業者の数は減っていくことが予想されます。また、海水温の上昇で獲れる魚種が変わってきているということや漁場で起こっている磯焼け問題は深刻で、原因のひとつとなっているガンガゼウニムラサキウニを漁業者が定期的に駆除していると話してくださいました。知らなかったことばかりで、青島に上陸してすぐに、子ども達の学習ノートにはたくさんのメモや感想が書かれていました。

※2 参照https://www.nishinippon.co.jp/item/n/450785/

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<島の魚食文化に触れよう!さつま揚げ作り>

続いてはお昼ご飯!このイベントはご飯もひとつの授業、お昼ご飯は自分たちで作ってもらいます。松浦の海で取れたアジを使って、さつま揚げを作ります。もちろん、魚を捌くところからやりますよ~!魚を捌くのが初めてという子もいましたが、青島体験振興会の皆さんが丁寧に教えてくださり、みんな上手にアジを捌いていました。さつま揚げは、日常の食卓やお客さんをもてなす際に欠かせないメニュー。味付けはシンプルで塩と砂糖のみ。砂糖を入れるのは青島ならではだそう。さつま揚げに使用しない頭や骨の部分は、お吸い物のダシに使用します!鱗以外はまるまる使う、獲れた魚を大事に余すことなく使うことが水産資源を守ることにも繋がると感じた子ども達でした。自分たちで作った料理の味は言わずもがな最高で、みんな口々に「美味しいー!」と言っていました。

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<昔にタイムスリップ!松浦の水産業の過去と今がわかる青島とは?>

美味しいお昼ご飯で満腹になった後は、青島の水産業の過去と今について深堀します。普段は漁業を営んでいる青島体験振興会の山下與範さんに講師をつとめてもらいます。青島は周囲10㎞、島民約200人の小さな島。アジ、タイなどの沿岸魚を対象とした定置網、刺し網業やアワビ、ウニなどの潜水漁、マグロ、トラフグの養殖などの一次産業と、蒲鉾製造の二次産業を生業としています。ずっと昔から海に支えられている島ですが、午前中の授業で聞いたような後継者不足、高齢化はここ青島でも問題となっています。そんななか、青島では島を盛り上げる必要があると感じ、島一丸となって”民泊”を取り入れ、漁業体験や海との共生を感じられる体験を導入し、海の大切さを多くの人に伝えるとともに、島の活性化を図っています。また、青島では資源保護を徹底するために、長崎県が設定する禁漁期や漁獲種サイズより厳しい独自の保護基準を設けています。例えば、県の規制ではアワビは10cm以上から漁獲することができますが、青島では11cm以上としています。アワビは大きくなるほど産卵量が多く、1年間で100万粒以上もの卵を産みます。藻場の減少などで年々獲れなくなるアワビを少しでも増やそうと産卵できる期間を長くすることで資源を守っているのです。常に自然・海と対話しながら暮らしている島の人々の海への想いを聞いて、「自分たちにできることはなにか」を考えた子ども達でした!

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<漁師に変身!水産資源を守る取り組みに迫る>

続いては漁師に弟子入りし、実際に行われている漁業を肌で感じます。まずは、タイやハマチなどを養殖している生け簀に向かいます。船で5分程移動した場所には、たくさんの生け簀があり、そこにはタイ、ハマチのほか、トラフグやクロマグロ、ハーブ鯖など様々な魚が養殖されています。そばまで船をつけて中を覗き込むと、およそ4000匹のハマチが!大量の魚を間近で見て子ども達は大興奮!エサをやると水しぶきを勢いよく立てて魚が食いつきます。その様子を見て子ども達はさらにびっくり。養殖されている魚は、成長に合わせてエサの量や種類を変え、徹底的に品質管理をしています。タイの生け簀には上にネットがかかっていました。これは、水面近くで養殖しているタイを紫外線から守るためです。タイは日焼けすると、美しい赤みがかった色が失われてしまいます。おめでたい時にもふるまわれるタイですから、なるべく綺麗な方が価値が高いため、こういった対策がとられています。養殖場を見学した後は、一本釣り体験です!普段から釣りをするという子もいれば、これが初めてという子もいて、みんながとても楽しみにしていた体験でした。普段はなかなか近付くことができない養殖場付近での釣り体験。養殖されている魚にあげたエサのおこぼれを狙った天然の魚が近くにたくさんいるので、比較的釣れやすいと漁師の方は話します。漁師の方の言う通り、20分程度の体験時間でほぼ全ての子どもが釣ることができました!釣りが終わった後、講師でプロダイバーの中村拓朗先生が岸壁の方を指さして、「あの辺りは昔、海の上から見ると真っ黒だった。黒く見えるのは海藻。今は磯焼けが進んでいて、黒いところがほとんどない、ここ10年~20年で変わってしまった」と話します。魚は釣れたものの、同時に環境悪化が進んでいる現状を目の当たりにした子ども達。「魚が釣れなくなるのが嫌だ」と、この問題を自分ごと化して考えているようでした。

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陸に戻った後も体験講座は続きます!事前に仕掛けておいたかご網を使って、磯焼けの原因のひとつとされるガンガゼウニの正体にせまります。かご網を引き上げると、そこにはガンガゼウニが!ガンガゼウニは返しがついている長い針をもっているため、慎重に扱わなければなりません。丁寧に針を落として、割って中を見てみると少量の身が…ガンガゼウニが厄介者とされている理由はここにもあります。食べられる部分が少なく、かつ味も癖がありあまり好まれません。獲ってもお金にならないのであれば漁師さん達は獲りません。しかし、青島の漁師さんたちは、藻を食べ、磯焼けを進めてしまうガンガゼウニを定期的に駆除の為に獲っています。獲って終わりではなく、少ない身の部分は魚のエサにするなど、資源を大切に扱っています。

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<魚食文化、海の暮らしを学ぶ 民泊体験>

夜は実際に青島で暮らしている方のご自宅に泊まる民泊体験です!長年青島で暮らし、海と付き合ってきた方々から、海の変遷、環境変化や漁師の現状などリアルな声を聞きます。青島を盛り上げるために民泊をやっている、いろんな方に青島や松浦の魅力を知ってもらえて嬉しい」と民宿先の﨑村さんは話します。

各ご家庭、魚を中心とした豪華な料理で子ども達をむかえてくださり、子ども達も「今まで食べた刺身のなかで一番美味い!」と感動していました。

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<水産資源を守る最新鋭機器がズラリ!魚市とエンマキに潜入>

青島の方々にお別れを告げ、二日目の体験場所に向かいます!

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向かう先は、国内初の高度衛生化閉鎖型施設の松浦魚市場!松浦市では、昔ながらの漁業で資源を管理しているだけでなく、最新の設備で資源を守っています。それが2021年に再整備で開設した松浦魚市場。国内初の高度衛生化に対応した魚市場で、最高水準の衛生レベルで水産物を管理・流通させています。ここでは松浦市水産課の立木稔さんに講師をして頂きます。松浦魚市場はEU-HACCPに対応する閉鎖型の施設で、陸揚げから選別、荷さばき、冷凍、出荷までを一貫して行い、水産物の安心安全性と付加価値を高めています。EU-HACCPとは、EUに水産物を輸出するための厳しい基準のことで、松浦魚市場はこれを満たしています。場内を見学するとたしかに魚を管理しているところとは思えないほど綺麗!「作業が終わったら毎日必ず綺麗に隅々まで掃除する」と立木さんは話します。ここではセリは水産物から離れた場所で行い、タブレットで入札することができます。また、18台のカメラで施設関係者の入退場や作業が記録確認できるなど、ICTが随所に活用されています。子ども達は、松浦の魚が外国に輸出できるほどの高水準で管理されていること、魚市が最先端の施設であることが分かり、地元長崎の海がすごいということを再認識した様子でした。また魚市と繋がっているEU-HACCP認定の日本遠洋旋網漁業協同組合(略称・エンマキ)の松浦第一製氷冷凍工場では、エンマキの大場修一さんから水揚げされたばかりの魚の箱詰め、冷凍、出荷までの工程をひとつひとつ丁寧に教わり、そのスケールの大きさに圧倒されていました。特に、魚の鮮度保持に欠かせない氷を管理する貯氷庫は、見たこともない氷の山で、マイナス30℃の冷凍冷蔵庫にも驚いていました。

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<2日間の体験のまとめ、発表、アウトプット製作>

2日の体験のまとめです!超濃密な2日間で体験し、感じたことをまずは班のメンバーで話し合い、まとめていきます。見たことない、体験したことのない景色や味、情報を調査したことで、それぞれいろんなことを思ったようです。「松浦の魚の魅力を全国に伝えたい」「青島に住む人が少なくなっているので動画でPRしたり、友達に教えたりすることが解決に繋がる」などと子ども達は、お世話になった松浦に恩返しをしたい気持ちが芽生えているようでした。それぞれの班で学びのまとめを発表し終えたあとは、それぞれで一枚のポスターを作ります。2日間で感じたこと、学んだこと、そして伝えたいことを絵とキャッチコピーで表現します。この日は時間が足りず、家に持ち帰り完成させることになりましたが、みんな素晴らしい絵を描いていました。そして、子ども達が描いた絵は、青島かまぼこの商品のパッケージデザインに採用される予定です!子ども達の学びや想いが詰まったオリジナルパッケージデザインの青島かまぼこ、発売が楽しみですね!

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