レポート
2023.09.22

いざ出航!「大村湾 海洋ごみ調査隊」を開催しました

⼀般社団法⼈海と⽇本プロジェクトinながさきは、地元大村湾を身近に感じ、海の環境について考えるきっかけを創出するため、「大村湾ワンダーベイプロジェクト」を展開しています。

このプロジェクトの一環として、2023年9月9日(土)に大村湾の海洋ごみ問題や海の魅力を知り、子どもたちの地元大村湾への関心を深め、大村湾を守りたい!という心を育むため、小中学生向け海洋環境学習イベント「大村湾 海洋ごみ調査隊」を開催しました。

このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

イベント概要                                    

■開催概要:大村湾 海洋ごみ調査隊

■日程:2023年9月9日(土)13時30分~19時00分

■開催場所:漂流ごみ目視観測調査 大村湾内
      ワークショップ 時津ヤスダオーシャンホテル

■参加人数:11人

■応援団長:まえかわぱーてぃー(お笑いタレント・長崎県時津町出身)

■共催:日本財団 海と日本プロジェクト

■協力:国立大学法人長崎大学水産学部、安田産業汽船株式会社

■公式HP(大村湾ワンダーベイプロジェクト):https://wonderbayomurabay.uminohi.jp/

■公式SNS(大村湾ワンダーベイプロジェクト):https://twitter.com/owbp_nagasaki

 

【体験内容】

①海底ごみってどんなもの?〈講師:⻑崎ダイビングサービス海だより 代表 中村 拓朗氏〉
 大村湾の海底ごみはどんな種類?どんな状態?たった今、潜って拾ってきたごみを見てみよう。

②海洋ごみ調査〈講師:国立大学法人長崎大学 大学院 水産・環境科学総合研究科 教授 清水 健一氏〉
 環境省の「沖合海洋ごみ調査」の手法を用い、船上から漂流ごみを観測・採集、GPSで測定記録します。

③ワークショップ
 2班に分かれて、模造紙に結果と課題、調査方法をまとめて発表しよう。

 

なぜ大村湾で調査するの?

①大村湾は、針尾瀬戸および早岐瀬戸のみで外海と通じている非常に閉鎖性が強い湾です。
 しかも、同じく閉鎖性海域である佐世保湾を介して外海とつながる世界的にも珍しい二重閉鎖性湾です。

②一般的に、閉鎖性海域は外海との水の交換が行われにくいため汚染物質が蓄積しやすく、
 水質の改善や維持が難しい性質を備えていると言われています。

 

【仮説】海洋ごみも水と同様に外海から入ってきにくいのではないか。
    仮説通りだと大村湾のごみは街から出ている?!
    また、ごみの量は他の海と比較すると多いのか、少ないのか。⇒実態を調査し広く訴求します。

 

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たくさんのごみを抱えて海から登場!                                

当日の参加者が「海にいっぱいごみが浮いていたら悲しいな」「大学の先生が研究で行う調査って難しいかな」など、期待と不安を胸に調査船へと向かう途中、大村湾に潜っていたダイバーで講師の中村先生がごみを抱えて海から上がってきました。
「潜って10分くらいの時間で拾ったごみだよ」と見せてくれたのは、ヘドロで汚れた海底のごみです。数年前に賞味期限が切れたお菓子のパッケージ、底にフジツボがくっついている酒類の空き缶、水槽の蓋、弁当のプラスチック容器、駄菓子のパッケージ等々、みんなが知っているものが並びます。
「プラスチックごみは紫外線や潮の流れの影響を受けて1年程度で粉々になります」という先生の説明に、「あれ?」と子どもたちの中で疑問が生まれました。「そう!よく気が付いたね。何年も前に賞味期限が切れたパッケージがきれいな状態で残っているということは、どういうことかな」先生の問いかけに、「長い時間をかけて最近街から海にたどり着いたごみなのかも」と、子どもたちの想像が膨らみます。
拾ったごみに記載されている賞味期限を確認するとわかることが増える、という実例をもとに学ぶことができました。

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沖にはごみが少なかった!それでも喜べない、子どもたちが見つめるもの。              

長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の協力のもと、大村湾全体を3つの測線に分けて漂流ごみを観測・分析する今回の「大村湾 海洋ごみ調査」。小中学生で構成される調査隊は、その調査船に同乗し3つの内、1つの測線の漂流ごみ目視観測調査を実際に体験します。
ライフジャケットを装着し、いよいよ海洋ごみ調査に出発する参加者たち。大学院生、大学生のサポートを受け、船上から漂流ごみを観測、専用タブレット端末を使ってGPSで測定記録します。タブレット端末には、ごみの種類、サイズ、船からの距離、数、色など、ごみの情報を選択して入力、タブレット端末に選択肢がない場合は野帳に時間、秒、種類等を記入します。また漂流ごみを見つけると、大学生チームがたも網ですくって採取、大きさや製造国、製造年月日等を記録しました。
大海原を漂う漂流ごみを探すため全員で目を凝らし、「あっ!ごみ!」と声を掛け合い双眼鏡で覗くと、海面に浮かぶ水鳥、また水鳥。1時間30分に及ぶ調査で見つけたごみは、小さな鳥の羽1枚、落ち葉1枚、流木1本、発泡スチロールの欠片1個など、とても少ない結果でした。

調査を終えて港に帰着。その直前、港湾部に浮いている多数のごみを発見しました。船を降り岸壁から確認すると、空のペットボトル、冷凍食品やアイスクリームのパッケージ、プラスチック容器、タバコ、ライター、マスク、と国内で流通している生活ごみばかりです。沖で見た美しい海とは全く異なる状況ですが、調査隊メンバーは自分なりに分析し思いを伝えてくれました。

「大村湾の中心部には自分の想像よりごみがなかった。でも岸にいっぱいごみがあった。昨日今日と風が強かったけれど、その風が無かったら岸ではなく沖にごみが浮いていたかもしれない。そう考えたらゾッとする。普段からポイ捨てをしないと意識することが大事だと改めて思う。(小学5年生)」
「漂流ごみは少ないが、漂着ごみが多い。ごみの種類から、ほぼ全て街・船・岸から直接来ていることがわかった。そもそもごみが出るものを使わない。海にたどり着く前の経路で除去するよう呼びかけたい。(小学6年生)」
「街にあるごみが雨風で川に流され、その川は海につながっている。まずは道路や川など街のごみをなくす呼びかけをしたい。(小学5年生)」
「大村湾は人が捨てているごみで汚れ、見えていないだけで、ごみがたくさん沈んでいると知った。たった10分間でたくさんのごみを集めることが出来る海底ごみの現状をみんなに伝えたい。(小学4年生)」
「海にごみが流れ着いて、海底に沈むと魚など海の生き物の居場所がなくなるのではないか。ごみを減らしたい。(中学2年生)」

船上での調査結果を受けて「漂流ごみが少なかった」と喜び終わるのではなく、海底・沿岸部と全体に目を向け「なぜそうなったか、誰がそうしたか、どうすれば解決出来るか」を考えた子どもたち。それぞれが真剣に海洋ごみ問題と向き合いました。
ワークショップでは、2班に分かれて調査結果と大村湾の課題、今回の調査方法を模造紙にまとめ、発表します。

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どうしたらみんなに伝わるかな?協力してやり切ろう!                         

初めは緊張していた子どもたちですが、徐々に打ち解けグループワークに取り組みます。
「模造紙のスペースを4つに分けて発表の内容をまとめよう」「大きくタイトルを書いたら伝わりやすいんじゃないかな」「この調査を体験していない人にもどんなことをしたかわかるようにしたい」など意見交換し、限られた時間の中で力を合わせました。
また、手が空いたメンバーが鉛筆の下書き線を消しゴムで消し、「そっちを書いてくれている間にここに絵を描くね。」とチーム内での自身の役割を考え行動に移していました。使用する油性ペンの色で意見が割れたり、模造紙の端が破れたり、そんなアクシデントの際もお互いを肯定する声掛けをして笑って乗り越えました。

調査隊メンバーは、普段から海洋ごみについて問題意識を持ち取り組んでいる子どもたちですが、自分の考えを仲間に伝え、相手の考えを知ることによって、研究の幅や視野が広がったようでした。大村湾の環境問題をベースに様々な面で子どもたちの成長を感じる、大きな学びの時間となりました。

大村湾ワンダーベイプロジェクトでは、子どもたちの調査結果と併せて、採集したごみの分析を含む研究結果をまとめ、⼤村湾に⾯する5市5町が⼀体感を持って⼤村湾の海洋ごみ問題に取り組んでいけるよう、これから広く訴求していきます。

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