長崎大学と大手電子部品・電気機器メーカーの京セラがこのほど、「スマートブイ」と呼ばれる新しいタイプの「ブイ」を共同開発しました。このブイはGPSやセンサーを搭載し、海水温や潮の流れの速度など20以上のデータを観測できます。
これは、海洋汚染や海水温の上昇など気象変動が社会問題となる中、海の状況を知る、いわゆる「海の見える化」を進めようと開発されました。開発にあたり、長崎大学海洋未来イノベーション機構の機構長・征矢野清教授は「スマートブイは未来の養殖と海洋産業の発展に欠くことができないものだ、と我々は考えている」と話し、京セラのIoT事業開発部・能原隆部長も「海の情報は非常に得るのが難しい。私どものブイで情報を取得する、お役に立てれば」と述べています。
このスマートブイの特徴は「電源要らず」です。海洋未来イノベーション機構の坂口大作教授は「バッテリー駆動型でもセンサーや通信機器を動かすことはできるが、広い海に多くのブイを浮かべるとバッテリー交換に多くの手間がかかる」と課題をあげ、「本学では潮流による発電システムを考えた」と開発経緯を説明。「スマートブイ」は、プロペラが潮の流れを受けて回ることで発電する「潮流発電」の仕組みを活用していて、この仕組みを長崎大学の技術が支えています。潮流発電は、気象の影響を受けにくく「電力の安定供給」というメリットも確認されました。坂口教授は「いろいろなアイデアを盛り込みながら最適形状を求めた」と開発に至る試行錯誤を振り返りました。また、スマートブイの開発では、2つのタイプの試作機が作られ、五島沖で実験が行われました。京セラIoT事業開発部の永山時宗さんは「(2種類のうちの1つは)発電量が、消費電力を上回る結果を得ることができた」と実験成果を報告しています。
海のデータの収集・分析は、環境課題の把握だけでなく、養殖業を含む「漁場の見える化」や船舶の安全航行にも役立つのではないかと期待されています。海洋未来イノベーション機構の征矢野機構長は「開発の基盤として重要な取り組みは、海の情報を知ること、これまで以上に詳しく広く、海の情報を取得することが重要になってくる」と話していて、関係者は「スマートブイ」の来年度の実用化に向けてさらに改良を進めることにしています。(KTNテレビ長崎ニュースより一部転載)